AIに仕事を奪われるのでは、と不安になったことはありませんか?

この回では、金属部品メーカーを舞台にした架空の物語を通して、経営者が社員の新しい役割を考える流れを紹介します。

経営者の方も、働く側の方も、ぜひ読んで下さい!


物語の舞台

目視検査をAIに任せようと決めた、金属部品メーカー「A工業」の社長、Aさんの物語です。

架空の会社の話ですが、実際にも起こりうる場面です。


聞いてしまった会話

入社3年目の20歳のBさん(女性)は、目視検査から仕事を始め、今は生産管理が中心です。

社内には、同じ高校を卒業して今年入社した18歳のCさん(男性)と、子育てをしながら活躍している32歳のベテラン、Dさん(女性)という、仲のいい仲間がいます。

Bさんは、Dさんに影響されて、結婚して子どもが生まれても、この仕事を続けたいと考えていました。

そんなBさんが、社長と工場長が「目視検査をAIに代替させる」と話しているのを、偶然聞いてしまったのです。

「将来、解雇されるかもしれない。パートにされるかも」

と極端に考えて、パニックになり、泣き出しました。

A工業は、創業当初から全員を正社員で採用していて、子育て中の時短勤務もできる、中小企業としては働きやすい会社です。

社員を大切にする社長が、解雇やパート化をするなんて、みんな信じられません。


社長に、直接聞いてみた

Dさんは、思い切って社長に聞きました。

社長の答えは、「最近ミスが多い目視検査の自動化の話をしていただけで、Bさんは思い違いをしている」というものでした。

ただ、Dさんが「将来、ほかの業務もAIに代える考えはありませんか」と聞くと、社長は「まったくないと言えば嘘になる。競争が激しくなるので、業務の効率化や生産性の向上は避けられない」

と答えました。

社長は、誤解を招いたことを謝り、全員に説明すると約束しました。

すぐに仕事がなくなるわけではないと分かり、社員たちは胸をなで下ろしました。

それでも、将来、自分たちの仕事が減るのは間違いありません。

社長は、AIに代替された仕事を担当していた社員をどうするか、という新しい課題に気づきました。


ChatGPTに相談する

社長は、次のようにChatGPTへ相談しました。


業務の効率化と生産性の向上のため、次の業務をAIやロボットに置き換えたいと考えています。

金属部品の目視検査/金属部品のバリ取りと確認(最終確認は目視)/生産数量の確認(機械を人が見ていたのをAIで自動化)/異常発生時の原因究明(過去の事例をAIに学習させて素早く解決)/部品の梱包(荷姿が決まっていて自動化しやすい)。


自動化すれば、その仕事を担当していた社員の仕事はなくなります。

しかし私は、創業当初から全員を正社員で雇い、不況時にも解雇していません。

AIに代替されても、解雇や非正規への切り替えは考えていません。

そこで、仕事がなくなった社員には、新しい仕事を担ってもらいたいのです。

最近は、製造業でもSNSやブログに力を入れる会社が増えているので、当社でも挑戦したいと思っています。

10代・20代が全体の2〜3割いて、ITに詳しい人が多いです。

ただ、40代以降のベテランには、パソコンが苦手な方もいるので、適性を見ながら仕事を割り振りたいと考えています。


次の3種類の社員に任せるべき仕事を、具体的に教えてください。

①SNSやインターネットに詳しい20代以下/②若手の育成役の30代/③現場を知り尽くした40代以降のベテラン


「解雇しない」という方針を、はっきり書いたことがポイントです。

そのうえで、世代ごとの特徴を伝えています。


世代別の役割

- 20代以下のスタッフ:デジタルネイティブなので、企業のSNSアカウントの運営、コンテンツの企画と作成、フォロワーとの交流を担当する。

ほかの会社の成功事例を学んで、自社の戦略に取り入れる役割も担う


- 30代のスタッフ:若手とベテランの間で、コンテンツ戦略の策定、キャンペーンの管理、データ分析による見直しなど、プロジェクトマネジメントを担当し、若手のメンターにもなる


- 40代以降のベテランスタッフ:製品知識や製造技術の解説、顧客への技術的なサポート、製造業の課題と解決策をまとめたブログ記事や資料の執筆など、専門的なアドバイスを担当する。

顧客との関係づくり、SNSを通じた採用活動や会社の紹介にも関われる


SNSは、目的とターゲットに合わせて選ぶことが大切で、若年層向けならInstagramやX、ビジネス向けならFacebookなど、特徴を生かして運用する、という助言もありました。


社長の決断

社長は、SNSマーケティングに力を入れることを決めました。

SNSで新しい顧客を開拓したり、コンテンツや書籍を出したりして、製造以外の収入源をつくる方法が、よさそうだと考えたのです。

ITが苦手なベテランも、製品の品質や製造の過程には精通しているので、広報面で助言できます。

全員を集めた場で、社長は「私もAIに代替させることだけを考えていて、皆さんの仕事のことを考えていなかった」と謝り、「XとYouTubeを始めたい」と話しました。

Cさんは「TikTokのフォロワーが10万人いるので、任せてください」、Bさんは「月間20万PVのブログを運営しているので、お任せください」と答えました。

A工業は、副業OKの会社で、同じ地域の同業他社より給料が高めで、休日も少し多いのです。

社長の知らないところで、優秀な人材が集まっていたのです。


架空の会社の話ですが、実際にSNSマーケティングで成果を上げている会社もあります。

経営者のみなさん、動くかどうかは、あなたしだいです。